近年、若年女性の間で見られる「コスプリ」は、いわゆる本格的なコスプレを目的とした行為に限らず、ハロウィンや夏祭り、クリスマスといった季節イベントを楽しむための手段としても行われています。特定のキャラクターになりきるというよりも、少し非日常的な装いで写真を撮ることで、その場の雰囲気を高め、思い出を共有する行為として受け止められている点が特徴です。
そもそもコスプリとは、コスチュームを身に着けてプリントシール機で撮影する行為を指します。ここで言うコスチュームには、メイドやサンタ、キョンシー、ポリス、アイドル風といった「キャラクターになりきれる衣装」のほか、浴衣や着物のように季節感や場所性を楽しめる装いも含まれます。こうした衣装は、若年層の自己表現や遊び心を自然に引き出すものとして受け入れられています。本記事では、女子高校生・大学生へのヒアリングを通じて、コスプリが果たしている役割を実際の声とともに紹介します。
▲モニター提供のプリの画像
いつもの友だちとの関係を深めるコスプリ
信頼関係がすでにできている「いつも一緒にいる友だち」との間では、コスプリは関係性をより強くする行為として機能している様子が見られました。
本来であれば少し恥ずかしさを伴うコスチューム選びも、気心の知れた相手と一緒であれば抵抗感が薄れるようです。衣装を選び、ポーズを相談し、撮影後に落書きや加工をする。こうした一連の共同作業そのものが、関係を再確認する時間になっていると考えられます。
一方で、進学したばかりで交友関係がまだ安定していない層では、コスプリをするという一歩を踏み出すまでに、ある程度の時間が必要な傾向も見られました。
「イベントだから何かしたくて高校のときの友だちを自分から誘ってキョンシーで撮った。いつものグループの子なら撮れる!」(Sさん・専門1年生)
「ハロウィンに高校の時の友だちとメイド服を借りて撮った。仲いい子や普段一緒にいる子じゃないとできない!関係値は大事!」(Mさん・大学1年生)
「中学の友だちとアニメキャラの格好をして撮った。仲良しじゃないとできない!」(Kさん・高校1年生)
「浅草と言ったら着物のイメージがSNSでついてて映えのために着た。どうせやるなら仲いい子とやりたい!」(Hさん・高校1年生)
「エルフ(制服のYシャツに花冠と耳)をサイトで購入した。普段話す子なら撮れる」(Kさん・高校2年生)
さらに、近年の若年層文化を象徴する「推し活」(特定の人物・キャラクターを応援する活動)も、コスプリと密接に結びついています。
プリ機上で推しの名前やモチーフを書き込むことで、好きなものを共有しているという実感が視覚的に残るため、グループ内の一体感が強まるようです。
「推し活アカでフォローしてる人が年上ばかりでメイド服×推し活プリをあげていたから、推しの名前を落書きで入れるために画面に空白作って撮った」(Hさん・高校3年生)
関係が浅い相手との距離を縮める役割もある
興味深いのは、コスプリがすでに親しい関係を深めるだけでなく、関係が浅い相手との橋渡しにも使われている点です。
猫・キョンシー・アイドルといった分かりやすい役割を衣装が与えることで、会話のきっかけや共通の世界観が一気に生まれます。初対面や知り合い程度の相手でも、何をする場かが明確なため、友だち同士の心理的な距離を縮めることに一役買っているのではないでしょうか。
「知り合いならだれでも!その辺で声掛けて仲良くなった子とかでもすぐにいける!仲良くなるためのツールとしてコスプリをする!」(Kさん・高校3年生)
「仲良くない子の方が撮る!コス選びからどんなのが好きなのかが知れたり、プリの撮影〜落書き・加工もどんな感じなのか知れていい!」(Mさん・高校3年生)
ただし、誰とでも無条件につながるわけではありません。SNSの投稿雰囲気やファッションの系統などを手がかりに、自分と合いそうかどうかを事前に見極めてから行動している様子も見られました。
「インスタの雰囲気を見て気が合いそうな2人に声かけた」(Kさん・高校3年生)
「雰囲気・系統…自分に合いそうな子なら関係値はどんな子でもいける!」(Mさん・高校3年生)
コスプリは若者の関係構築の新しいスタイルかもしれない
今回のヒアリングから、コスプリは単なる記念撮影ではなく、人間関係を「維持する」「深める」「広げる」ための装置として機能していることがうかがえました。
親密な友人関係の中では、共同作業を通じた関係の再確認として。一方で、まだ関係の浅い相手に対しては、場の緊張を和らげ、自然につながるための媒介として機能しています。さらに、推し活やSNS上での系統一致といった現代的なコミュニケーション条件と組み合わさることで、安全で納得感のある関係構築を可能にしていると考えられます。
コスプリは、自己表現や創造性の発露であると同時に、若年層が人間関係を調整し、更新し続けるための新しい手段なのかもしれません。
調査概要
調査案件 :コスチュームに関する調査
調査対象者:自社モニター(高校生・大学生の女性18名)
調査方法 :インタビュー
調査時期 :2025年12月~2026年1月
調査企画者
林 佑樹
