新型コロナウイルス感染症の蔓延から早5年が経ち、以前の生活を取り戻したと言える昨今。コロナ禍にはマスクをしていないと周囲からの視線が気になるような風潮もありましたが、2025年4月現在はそういったこともなくなったかと思います。
マスク着用が任意になったこの2年間で、実際にマスクを着用している人の割合やマスクの需要がどう変化したのかに加えて、感染対策に対する意識の変化など、マスク着用についての意識に変化があったのかについての調査を行いました。
当社の運営するアンケートアプリ「coetto」のモニターの15~29歳の女性を対象に、マスク着用が任意となった当初の2023年4月と、それから2年が経過した2025年4月に同様の調査を実施しました。2年間でマスク着用についての印象や意識に変化があったのか、比較しながらご紹介いたします。
マスク着用率は「公共機関で移動中」が38.1%減。感染対策への意識は低下傾向に
「現在のあなたは、どんな場面でマスクをしますか?」という質問に対し、「風邪を引いた場合」が最も多く48.0%。次いで「すっぴんのとき」が44.9%、以降は「花粉シーズン」(34.4%)、「通勤、通学時」(33.5%)、「公共機関で移動中」(31.7%)と続き、3位以降は非常に僅差の結果になりました。
2023年と比較すると全体的に着用率が下がっている様子が見受けられますが、特に「公共機関で移動中」の数字の変化が大きいことが明らかに。2023年では69.8%と群を抜いて多い結果でしたが、2025年では31.7%となり、義務でなくなったことにより約4割の人がマスクをしなくなったことがわかります。さらに、1位の「風邪を引いた場合」も、2023年の59.2%から2025年の48.0%となり、この2年間で11.2%低下していることがわかりました。マスクの着用が義務ではなくなってから2年経ち、感染症対策にも個人差が現れるようになったということでしょう。
すっぴん隠しとしての需要は変わらず。10代後半のすっぴん時マスク着用率はコロナ禍前の約3倍に
一方で、ほとんど数値に変化がないのが「すっぴんのとき」です。2023年は46.3%、2025年は44.9%と、ほぼ一定の数字を維持しています。
「すっぴんの顔を隠したい」という理由は、本来の使用用途である感染対策ではありませんが、メイクの若年化が進んだ令和を生きる若年女性にとっては、大きな利点であることが推測できます。
すっぴんのときのマスク着用率は、コロナ禍前と比較して全年齢で大きく増加していますが、特に10代後半では14.7%→39.7%と約3倍に跳ね上がる結果となりました。
ネット上の記事には「コロナが蔓延し始めた2020年4月に新高校1年生となった学生は、多くの友人の素顔を知らないまま卒業してしまった」という内容のものが多く存在します。
相手に顔を見せないことが当たり前の状態で思春期を過ごした学生たちは、「素顔を見られてイメージと違ったらどうしよう」「メイクをしていなかったらどう思われるだろう」などといった、すっぴんを見られることに対する不安感があるのかもしれません。その結果、特に10代後半の着用率が大きく上がったのではないでしょうか。
「すっぴん隠し」としてのマスク需要は、想像以上に大きいものなのかもしれません。
【ポジティブイメージの比較】マスク生活の反動でおしゃれを楽しみたい人が増加か
「マスク着用のポジティブなイメージはありますか?」という質問に対して、ランキング上位の「感染症対策になる」「花粉やほこりの対策になる」は数値に大差ありませんでした。
一方「メイクをしなくても良い」は、2023年が45.7%なのに対し、2025年は39.2%と数値が6.5%低下する結果に。コロナ禍中はメイクをしても見せることができなかったこともあり、現在はメイクによるおしゃれを楽しみたいという人が増えたのかもしれません。
【ネガティブイメージの比較】そもそも「使いたくない人は使わない」
「マスク着用のネガティブなイメージはありますか?」という質問に対しては、「息苦しい」(58.5%→47.1%)、「蒸れる」(55.9%→44.5%)、「暑い」(50.8%→35.7%)の項目に数値の低下が見られました。その他の項目も、全体的に数値が下がったことがうかがえます。
着用が義務でなくなったために「息苦しいなどの理由で使いたくない人は使わない」という習慣が定着し、そもそもマスクに対するネガティブイメージを持つ人が減ったのではないかと推測されます。その結果、実際に着用した際のネガティブな感覚が薄れたのではないでしょうか。
今後の着用意向は「常に使いたい」が減少し「できるだけ使いたくない」が増加
「今後もマスクを使いたいですか?」という質問に対し、「状況に応じて」が最も多く53.7%。2023年の51.8%よりもわずかに数値が上昇したものの、ほぼ変わらないという結果になりました。
一方で、「常に使いたい」は2023年の29.3%から2025年の19.8%と9.5%の低下、「できるだけ使いたくない」は2023年の8.4%から2025年の15.0%と6.6%上昇しました。
「常に使いたい」「状況に応じて」と答えた人を合わせると、使いたい人の割合は81.1%→73.5%と7.6%低下しています。新型コロナウイルス感染症が5類に移行し共存する社会になったことで、マスク着用意向は低下傾向にあると言えるでしょう。
今後「すっぴん隠し」は感染対策と同じくらいの需要に?
2025年4月現在のマスクの着用率は、コロナ禍直後の2023年に比べて大きく低下する結果となりました。しかしこの結果は、感染対策への関心の低下よりも、新型コロナウイルス感染症に対する不安感の解消が大きく影響しているのではないでしょうか。
今後も、制限されていたおしゃれを楽しむことや、人とのつながりを重視する傾向が強くなることが推測されます。コロナ禍での感染対策の意識は忘れずに、状況に応じてマスク着用の有無を使い分けることが必要になってくると思われます。
一方で「すっぴんを隠せる」という需要が変わらず高いことは興味深い結果であり、メイク需要の若年化や容姿コンプレックスなど様々な事柄に関係する内容かもしれません。
ガールズ総合研究所では今後も、若年女性の意識や行動に注目しながら継続的に調査を行っていきます。
調査概要
「マスク」に関するアンケート
調査対象者:10代~20代の女性311名
調査方法:インターネットリサーチ
調査時期:2025年2月26日(水)~3月10日(月)
執筆:望月直
2000年生まれ。美大付属中高・美大を卒業し、トレンドやアートカルチャーに興味を持つ。自身もZ世代である強みを活かし、若年女性の価値観に迫る。現在はフリーランスのグラフィックデザイナー・ライターとして活動中。