エンタテインメントとは、本来、人の心を動かし、日常にときめきや癒やし、共感をもたらしてくれる体験のことを指します。映画や音楽、ゲームといったコンテンツが代表的です。
しかし、今の若年層にとって、その枠組みが少しずつ変わり始めているのかもしれません。いまや「飲む」という、ごく日常的な行為ですら、自己表現や世界観づくりの一部として楽しまれることもあります。
今回のヒアリングでは、ただ喉を潤すだけの存在ではない「ティー飲料」について、高校生から大学生のZ世代の女性に詳しく語っていただきました。発言を読み解いていくと、ティー飲料は単なる“のどの渇きを潤すもの”ではなく、学校・カフェ・家庭という3つの生活シーンに応じて、まるで気分のスイッチのように使い分けられている姿が浮かび上がります。そこには、若年層ならではのリアルな感覚や、友人関係・SNSの影響が強く働いていました。
※緑茶、紅茶等、茶葉を用いた飲料を総称するため、便宜上『ティー飲料』と表記します
PET&紙パックは“登校時の相棒”
学校に行く日は、コンビニや購買で買うPET飲料や紙パック飲料が主役です。
例えば高校3年生の Mちゃん は、「午後の紅茶の3種類は朝の気分で選んで買っていく。3種類どれも好きでまんべんなく飲んでる!」と話していました。
別の高校生 Kちゃん からは、「最近はリプトンの紙パックのピーチやアップルが定番になってて、学校の購買で買えるからほぼ毎日どっちか飲んでる!」という声もあり、日々のルーティンにティーが自然と組み込まれていることがわかります。
こうした声から、学校シーンでは飲み慣れた定番の安心感とその日の気分に合わせて選べる柔軟さの両方が重視されていることが見えてきます。
SNSで広がる“推しカスタム”の楽しさ
学校とは対照的に、放課後や週末はカフェでのティー体験が中心になります。特にスターバックスコーヒージャパン(以下スターバックスと記載)とゴンチャジャパン(以下ゴンチャと記載)は圧倒的な人気で、ブランドとしての存在感が非常に強いことがわかります。
スターバックス派の学生は「Instagramでカスタム動画見て、今年初めてほうじ茶クラシックティーを飲んでハマった!」、「SNSのおすすめに出てきて試しに飲んでみたらめちゃくちゃ美味しくてスタバの時はこれしか飲まない!」と、SNSでの発見が行動に直結するケースが見られました。
ゴンチャ派の学生は、「ゴンチャではブラックティーしか飲まない!必ずタピオカ入れる!」「烏龍ミルクティーは甘すぎないから好き。タピオカは入れたり入れなかったり」など、ベースの茶葉+トッピングという“自分の定番カスタム”を持っていることがうかがえました。SNS発の情報や個々のカスタム嗜好が購買行動に直結し、Z世代におけるカフェでのティー体験では、ブランド選択と満足度、つまり『有名店に行く』と『私だけのオリジナルティをカスタムする』を両立出来ることが重要なようです。
ほっと一息は“マイ紅茶タイム”で
一方で、家での飲用行動は学校やカフェとはまったく異なる様相を見せます。
Nちゃんは、「親が紅茶・ダージリン・ルイボスを大量にストックしていて、家ではこの3つのどれか。ご飯のときもいつもこれ」と述べ、家庭内の飲用は家族が買うものに強く影響されていることを示しています。大学1年生Cちゃんは、「落ち着きたいときやリフレッシュしたいときはホットの紅茶を作る」と話し、ティーが気分を整える役割を担っていることもわかります。
また、家には麦茶・緑茶・ほうじ茶などが常備されている家庭が多く、「夏は水出し麦茶が必ず作ってある」「ご飯後は急須で入れた緑茶が定番」など、生活に溶け込んだ“家庭の味”としてのお茶も存在していました。
家庭シーンでは、カフェやコンビニでの選ぶ楽しさとは異なり、落ち着き・安心・家族の習慣と結びついている点が特徴的です。
次に出会う一杯は、どこで見つかる?
Z世代におけるティー飲料の選択は、学校・カフェ・家庭という生活シーンごとに役割が明確に分かれ、気分や行動のリズムを支える存在になっています。登校時には定番PETや紙パックで手軽さと安心感を求め、放課後はSNSの影響を受けたカフェでの推しカスタムを楽しみ、家庭では家族の習慣に根ざした落ち着きの一杯を選ぶ。こうした多様な飲用行動は、若年層がティー飲料を気分を整えるパートナーとして柔軟に使い分けていることを示しているのかもしれません。
そして、これはティー飲料に限った話ではありません。その時々の気分や状況によって求める価値が大きく変化することから、企業は一律のメッセージではなく、シーンに寄り添う体験設計が不可欠です。特に、SNSで偶然見つけた情報が行動の起点になる傾向は非常に強く、発見を生み出す導線づくりは重要な戦略ポイントと言えます。さらに、今回の事例でも見られたように、ユーザー自身が選び方や組み合わせを楽しめるカスタム性のあるサービスや商品は、ブランドへの愛着や再訪を促すドライブのかかる商品といえそうです。
※本調査記事ではアンケート結果をそのまま反映させております。
※モニターの発言をそのまま取り入れておりますので、商品名が略されている場合がございます。
調査概要
調査案件 :飲料に関する調査
調査対象者:自社モニター(50名)
調査方法 :インタビュー
調査時期 :2025年4~12月
調査企画者:林 佑樹