株式会社インテージが立ち上げた「産学連携生活者研究プロジェクト」に、フリュー株式会社が参画。
協力大学である関西学院大学 人間福祉学部 社会起業学科 森藤ちひろゼミの学生を対象に、2日間の集中ワークショップを実施しました。
若年層の「余暇」をテーマにした記事に続き、今回は高齢者を対象に実施した調査についてお届けします。
なぜ「高齢者の余暇」を捉え直すのか
総務省「令和3年社会生活基本調査」の「男女・年齢・行動の種類別総平均時間」を見ると、65歳以上のいわゆる“3次活動(余暇に該当する時間)”が、他の世代と比べて明確に高いことがわかります。
では、その“高齢者の余暇”にはどんな特徴があるのでしょうか。今回私たちは、関西学院大学の森藤ゼミとともに高齢者向けのワークショップを実施し、リアルな声や行動傾向を丁寧に拾い上げました。
高齢者の余暇の“キーワード”から見える暮らし方
関西学院大学で実施したワークショップでは、学生たち自身が高齢者の方々にインタビューし、その声をもとに分析を行いました。ヒアリングを通じて、高齢者のみなさんが日常の中でどのように余暇を捉えているのか、そしてどんな活動を求めているのかについて、リアルで温度感のある意見が数多く集まりました。
特に印象的だったのは、余暇を「自分を整える時間」や「社会との接点を保つ手段」として捉えている点です。
「日々の暮らしは大きな予定は少なく、家事、買い物、散歩が中心。散歩中は特に花を見ることを楽しみにしており、季節の移り変わりを感じる瞬間が生活の張りになっている。気に入った花はスマートフォンで撮影し、後から見返すことで、その時の気分や天気まで思い出す」
」(75歳・女性)
「約20年前から童謡コーラスのグループに所属し、忙しい中でも、仲間と歌ったり先生である若い音楽家の応援をすることを楽しんでいる。自分が出る舞台や、応援している音楽家の舞台のために外に出かけることも多い。最近は植木の世話にもハマっていて、一から寄せ植えをするなど、何かを作り上げることに楽しみをおぼえている」(80歳・女性)
「近くに娘の家族たちが住んでいるので週に3、4回は孫と遊ぶ時間がある。コーヒーや紅茶といったドリンクを挟んで誰かと会話する時間を楽しんでいることが日常の中で大切。日常をどのように楽しく過ごしていくかを考え、時々の旅行を楽しんでいる」(66歳・女性)
地域コミュニティへの参加や仲間づくりへの関心も高く、健康維持や生きがい形成と余暇が密接に結びついていることがうかがえます。単なる趣味や娯楽ではなく、“社会につながる余暇”として認識されているようです。
若者と高齢者、余暇に求めるものはどう違う?
大学生ワークショップと比較してみると、高齢者と若者が余暇に求める価値には、共通点と違いの両方が見えてきます。
特に共通しているのは、どちらの世代も 「あまり負荷のかからない余暇」 を好む点です。
高齢者では 「テレビ・ラジオ視聴」「近所をゆるく散歩する」といった、体力や生活リズムに無理のない過ごし方が多く見られました。
一方、大学生からは「スキマ時間の動画視聴」 「友達とカフェ巡り」といった、情報量や心理的プレッシャーを軽くする時間の使い方が挙がっています。
背景は異なりつつも、“軽さ”を求める姿勢はどちらの世代にも共通していると言えそうです。
一方で大きく異なるのは、余暇に「自己効用感」や「社会とのつながり」を求める割合です。高齢者は、「孫と遊ぶ」「花やペットの世話をする」「地域サロンやコミュニティの軽い交流会に参加する」のように誰かの役に立っている実感や、人と関わる機会が生活満足度に直結しやすい一方、大学生は“リフレッシュ”や“義務からの解放”といった個人的な回復を優先する傾向があるようです。この違いが、世代ごとの余暇スタイルの差を生んでいると考えられます。
さらに深掘りしていくと、高齢者の方々は「自己効用感」や「社会とのつながり」を十分に満たせないことで、じわじわと“寂しさ”が募っていく様子もうかがえました。その気持ちの延長として、誰かに自分の思いや日々の出来事、昔の思い出を伝えたい・共有したいという欲求が強まっているようでした。こうした声は、高齢者の余暇が単なる時間つぶしではなく、心のよりどころとして機能していることを示唆しているのかもしれません。
▼一例
高齢者の「豊かな余暇」をつくるために
高齢者にとっての「豊かな余暇」とは、単に時間を埋めるためのものではありません。今回のワークショップを通じて見えてきたのは、余暇が 心身の健康を整え、生きがいを育み、社会とのつながりを保つための大切な体験として機能している、という点でした。いわば、“毎日の生活を前向きにしてくれる時間”として位置づけられているのです。
さらに興味深いのは、こうした余暇の価値が、ただの個人の楽しみを超えて、社会のこれからにも関わってくるということです。デジタルデバイスの使い方をフォローする「デジタルサポート」、仲間と出会える「コミュニティ形成」、気軽に参加できる「軽負荷の体験づくり」など、高齢者の余暇を支える仕組みには、社会課題の解決とビジネス価値の両立という、まさに今求められている領域が広がっています。
高齢者の余暇が“心のよりどころ”へと進化している今、弊社がこれまで培ってきた「やさしいUI設計」や「誰でも楽しめる体験づくり」といった技術・クリエイティブ領域は、その支援に生かせる可能性があります。
日本はこれからますます高齢化が進む社会です。だからこそ、高齢者の余暇をどのようにデザインし、どんな価値を提供していくのかは、企業や行政にとって避けて通れないテーマになっていくでしょう。余暇の意味や求められる体験が多様化しているいま、今回のレポートが、皆さまの生活者理解を深める一助となれば幸いです。
調査概要
調査案件 :余暇に関する調査
調査対象者:65歳以上の男女(11名)
調査方法 :インタビュー
調査時期 :2025年12月・2026年1月
調査企画者:林 佑樹

