より的確に、より生のガールズ実態を捉えるために、Z世代女子が自分たちの価値観やトレンドを探る「エンタメ部」を1年間限定で立ち上げました。全6回のテーマに取り組む予定で、第1回目となる今回は『親世代にこれだけは言いたい!私たちの価値観・わかってほしいこと・そっとしておいてほしいこと』というテーマを基に彼女たちの価値観を探ることとしました。
この取り組みへ自主的に参加してくれた高校1年生~大学4年生の7名の“部員”たちが姉妹での議論、親や友人へのインタビュー、WEBでのアンケート、SNSのコメント調査といった、定性・定量調査を実施した結果を持ち寄って開催された座談会の様子から、トレンド・エンタメが生まれる背景となる価値観を見つめます。
※参加部員の名前は仮名です。
1. SNSから現実世界へシームレスに繋がる自己表現とコミュニケーション
事務局:「Z世代はSNSに踊らされすぎ」と言われることもあると思いますが実際はどうでしょうか?
松本さん:そういうこともありますけど、SNSで出てくる色んなファッションや推し候補から好きなものを選べるので、むしろ昔より自分が本当に好きなものを捉えやすくなっていると思います。
あと、色んなコスメを楽しむのも自己肯定感を上げる活動の一環で、必ずしもSNSに上げて承認欲求を満たしたいというわけではありません。
塚本さん:私の友だちも推し活をしてるんですけど、SNSで同じ人を推してる素敵なお姉さんを見て、その人を憧れにしたりしてるみたいです。
橋本さん:「インスタで見たこういう写真を撮りたいんだよね」という感じで、SNSがリアルでの会話やどこかに行くきっかけにもなります。
高橋さん:会話が途切れちゃったときにSNSのおすすめ動画を見せ合って話が盛り上がることもありますよね。
菊池さん:ちなみにSNSだけじゃなく、スクールバッグに推しの写真とかをジャラジャラつけたり絵を描いたり、かわいいブランドのものを買ったりと、リアルの生活でも自分の個性をアピールする人が増えています。そういうアイテムも「それ何?」といった友だちとのコミュニケーションのきっかけとなっているように思います。
彼女たちにとってSNSと現実世界はシームレスに繋がっており、SNSの細分化された情報から本当に自分が好きなものを選び、それをリアルな体験へと活かしています。また、SNSで多様な自己表現を目にする機会が増えたことで、スクバデコのようにリアルな場でも個性をアピールしたいという思いが強くなっているのではないでしょうか。
また「親世代にわかってほしいこと=新しい生活様式や価値観、そっとしてほしいこと=個人の選択やプライベート」と分析をしている部員もおり、上記のやりとりを踏まえると彼女たちはSNSを通じて情報を収集し、自分の憧れをある意味取捨選択していく過程に対して、親世代にはそっとしてほしいと思っているのかもしれません。
2. 複数のSNSアカウントを使い分けることで友人関係の濃淡を調整
事務局:SNSを交換する相手やアカウントについて意識していることはありますか?
菊池さん:人にもよると思いますけど、インスタだと投稿・ストーリーの内容でその人がどんな人かが分かりやすいので交換する抵抗感が低くて、特別仲良くない子とも交換しやすいです。
高橋さん:いろんな人と交換するので、3つぐらいのインスタアカウントを使い分けている人が多いですよね。
前田さん:私はインスタだと元々本アカとサブアカを持っていたのですが、大学入学時の「とりあえずの連絡先交換」でそれらを共有することが嫌だったので新たにアカウントを作っちゃいました。
ちなみに本アカは周りの人たちに見せたい自分を見せる用で、めったに投稿しませんが数百人と共有しています。一方でサブアカは好きなもの全開の投稿をよくしており、本当に仲のいい数十人としか共有していません。
橋本さん:私も色んな人ととりあえず繋がる用のアカウントを持っていますし、友だち用のアカウントと好きなもの用のアカウントはわける人が多いですよね。
塚本さん:親からは「無闇にSNSでつながるのは危ない!」と思われてますけど、私たちって結構その辺気を付けてますよね。
事務局:交換するSNSアカウントを相手によってわけているとのことですが、その後の付き合い方はどうですか?
松本さん:SNSのやり取りで言うと、気軽に連絡するので既読無視とか未読無視をされても「なんか忙しいんだろうな」くらいで別にストレスは感じないですね。
井上さん:周りの人たちの話を聞くと、仲がいい友だちがいる上で他の人たちとも「楽しく会話はできるけどいつも一緒にいるわけではない」というドライな関係性を作ってストレスをためないようにしているみたいです。
菊池さん:確かに私もそうですね。遊び方も違ってて、私は気の置けない仲がいい友だちとは遊びに行くときに大体の集合時間と場所だけ決めて行き当たりばったりに過ごせるんですけど、ドライな関係の友だちと外で会うときは間が開いてしまうのが怖いので事前に綿密に計画を立てています。
前田さん:うん、本当に何でも話せて真顔でいても放置してくれる仲がいい友だちがいるからこそ、「これ以上深くしなくていいやー」と思えるドライな友達も作れるんだと思います。
彼女たちは投稿内容の異なる複数のSNSアカウントを相手に合わせて共有することで、無闇に深い関係を築くことを避け、特定の友人との間に深い絆を築く一方で他の人たちともストレスなく付き合える適切な距離感を保つという人間関係の濃淡の調整をしているのかもしれません。
またとある部員は「SNSという世界があることで『希薄であること』と『ドライであること』は違うと思えてきた。ドライは相手のことは結構好きなんだけど、ずっと一緒にいるという関係性を強制するわけではなく、話すときだけ楽しく話す関係であり、希薄ということではないのではないか。SNSで見たいものがあったりすると忙しくなり、他人に執着しなくなったのかもしれない。」という考えを共有しており、このあたりにも友人関係において濃淡を使い分けるコミュニケーションを取っていることが分かります。
エンタメ部レポート第1回目となる今回はZ世代女子の根本にある価値観に着目しましたが、次回以降はよりテーマを絞って、様々なトレンド・エンタメとの繋がりを掘り下げていきますので第2回目の活動もご期待ください。
ちなみに部員である彼女たちは、エンタメ部の活動を通じて自身の思考を深めることや、今後の探究活動へのモチベーション向上に繋がったようです。ここで少し彼女たちの感想を共有します!
・(調査をする)私自身がいろんな視点で物事を捉えなおせる、とてもいい機会でした。
・座談会を通して、「察する」のではなく考えをきちんと共有し、尊重し、理解することのできる環境をつくる場がとても重要だと強く感じました。
・座談会で他部員と話をする中で「まだまだいけたな…」と悔しく思うこともあったので、その思いを次回に繋げたいです。
・今回はインタビューで個人を深く掘り下げることに重きを置いたのですが、次はそこから視点を広げて論理的にまとめられるようにしたいです。
定期テストや部活動、サークル活動など日常生活が忙しい中でエンタメ部の活動に取り組んでくれていた彼女たちですが、もう少し探究したい、掘り下げたいという思いが生まれ始めています。次回をお楽しみに!
調査概要
調査対象者:高校生~大学生7名
調査方法 :対面インタビュー
調査時期 :2025年5月
調査企画者
林 佑樹