2015年に国連サミットで採択された2030年までに達成するべき「持続可能な開発目標」を指す「SDGs(Sustainable Development Goals)」。テレビを始めとしたメディアでも積極的に取り上げられるようになり、さらに2020年度から小学校で、2021年度から中学校、そして2022年度から高校でも「持続可能な社会の創り手の育成」について、「新学習指導要領」へ明記され、取り入れられています。このように、学生時代から「SDGs」に触れている10代~20代前半のZ世代は「SDGsネイティブ」と言われています。
若年層の社会問題への関心傾向からアプローチのヒントを探る
昨今は生活の中で見聞きすることが増え、「SDGs」は幅広い年代にも身近な言葉になりつつありますが、社会問題に身近な場所で触れている若者たちへは、実際どのくらい浸透しているのでしょうか。また、どのような社会問題に関心があり、サービスの選択や就職活動の際、企業の社会問題の取り組み状況について選択に影響が出る可能性があるのでしょうか。
これらをひも解くことで、若年層をターゲットとするサービスや雇用を検討している企業にとって、アプローチのヒントが見えてくるかもしれません。
2020年にも同調査を行ったところ、10代後半の約7割が「社会問題に関心がある」と回答。あれから3年を経て、現在の若者層の社会問題の意識について、改めて調査を実施しました。
学校教育導入の有無による世代間のSDGs認知と関心の差
まず、SDGsの認知について「『SDGs』という言葉を見聞きしたことがあるか?」という問いに対し、「内容までよく知っている」と回答したのは、10代後半が52.9%と世代の中で最も多い結果となりました。次点も20代前半が40%となり、Z世代全体で見ると48.7%と約半数がSDGsについてよく理解できていると答えています。全世代の35.1%という数値と比較すると、若年層のSDGsの認知は高いことが分かります。
また「『SDGs』について、関心があるか?」という質問には、「関心がある」と「やや関心がある」を合わせると、10代後半は約7割、20代前半は7割を超え、認知だけでなく関心もかなり高い、という結果に。3年前の同調査では20代は約6割程度だったことから、現在はより若年層のSDGsへの関心が高まっている傾向があるようです。
一方で、30代以降のSDGsへの関心は半数~6割程度にとどまっています。やはり10代は学校教育で取り上げられており、20代は大学や就職活動などで触れることも多いことから、Z世代のSDGsの理解は深いようです。また、これからの未来を担う世代でもあるため、自分たちの将来に起こりうる現実として、壮年層に比べて主体的に捉えているのかもしれません。
最も「企業の社会問題への取り組み」を意識する世代は20代
さらに、「利用・購入する商品やサービスを見比べる時、販売元企業等の『社会問題・社会課題への取り組みの有無、その内容』を重視するか?」という質問に対して、「重視する」と「やや重視する」の回答を合わせると、20代前半も後半も6割に達し、20代が最も企業の社会問題の取り組みを意識している、と分かりました。やはり、もともとSDGsに対して関心が高い20代は、商品やサービスの購入の際も社会問題への意識が高い傾向があるようです。
また、10代と30~40代前半は4割程度にとどまりましたが、40代後半以降から50%近くに増加している点も着目したいところ。前述のSDGsへの関心に関しても、40代後半から微弱ではあるものの高まる傾向にあったことから、企業への社会問題に対する意識はSDGsへの関心と比例するのかもしれません。
とはいえ、同じく関心が高かった10代は、企業の社会問題に対する意識はそこまで高くなりませんでした。もしかすると、社会経験がある20代に比べると、まだ販売企業の姿勢まで意識が向きにくいのかもしれません。
次に、就職活動時における企業の社会問題の取り組みへの重視について聞いてみると、こちらも20代前半が「重視する」と「やや重視する」を合わせると6割を超え、最も多くなりました。また20代後半も約6割となり、やはり他の世代に比べて20代の意識がかなり高いことが分かります。
逆に、40代前半が約4割と最も低く、30代も20代と比べると低い結果に。しかし、40代の後半から再び増えており、20代と合わせて親世代も、企業の社会問題の取り組みについて「重視する」傾向にあるようです。
子どもの就職先の企業がどのような社会問題への取り組みをしているか、気になる親御さんは少なくないでしょう。今後の企業の発展性や先見性なども含め、注目しているのかもしれません。
Z世代が関心の高いSDGs項目は「ジェンダー平等」
また、合わせて「SDGs(持続可能な開発目標)の具体的な目標17項目の中で関心の高い項目」についても聞いてみたところ、世代全体では「1_貧困をなくそう」(33.9%)が最も多い結果となりました。次いで「3_すべての人に健康と福祉を」(31.2%)、「2_飢餓をゼロに」(25.5%)となり、経済的な問題や健康や福祉などに関する課題に関心がある方が多いという傾向があるようです。やはり、人間の資本である健康と、それを支える経済と福祉は、世代を通して注目されていると考えられます。
ただ一方で、Z世代(10代~20代前半)だけで見てみると、最も多く挙げられた項目は他の世代と同じく「1_貧困をなくそう」(35.9%)でしたが、2番目に挙げられたのは「5_ジェンダー平等を実現しよう」(30.6%)でした。
Z世代にとって、学校でのジェンダーレス制服やLGBT教育、就職活動で目にする男女の格差などから、「ジェンダーの平等」は現実として身近で主体的に感じられる課題なのかもしれません。
Z世代には社会問題の取り組み発信が企業ブランド力向上のカギに
「SDGsネイティブ」と呼ばれるだけに、Z世代の「SDGs」の認知は高く、関心もとても高いことが分かりました。
また、就職先やサービス提供企業の社会問題への取り組みについても、重視する傾向は20代が最も高く、就職する企業に関しては、親世代である40代後半以降とともに強く意識をしているようです。
この結果から、今後若年層をターゲットとする企業は、サービスや事業内容だけでなく、社会問題の取り組みについての発信をすることが、有効なアプローチとなる可能性があると考えられます。
特に、Z世代の関心が高かった「ジェンダー平等」に関する取り組みは話題になりやすく、注目度も上がる可能性があります。企業は、顧客が関心を寄せる社会課題への解決を意識していくことで、さらなる価値の向上へとつながっていくでしょう。
調査概要
調査対象者:15~59歳男女 1136名
調査方法:インターネットリサーチ
調査時期:2023年8月29日(火)~8月30日(水)
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