近年、よく耳にするようになった「SDGs」という言葉があります。これは2015年9月の国連サミットで採択された「2030年までに達成すべき、持続可能でより良い世界を目指す国際目標」のことを指しますが、残念ながら日本のSDGs達成順位は、現時点では低い傾向にあります。
ですが、我が国では2005年から「持続可能な開発のための教育」を推進しており、教育現場は変化を続けてきた事も事実です。
ゴールである2030年に社会の担い手となる若者世代が、SDGsをはじめとした社会的な課題への企業の取り組みに対して、どのような意識を持っているかを知るための調査を行いました。
社会貢献活動を行っている人は10代後半が最多。低年齢ほど多い傾向
社会貢献活動の実施状況について、社会貢献活動を「よくしている」、または「たまにしている」と回答した女性は、10代後半で32.9%でした。この値は、10代後半から50代の女性の中で最も高いという結果になっています。女性全体では27.1%。年代別にみると、低年齢ほど多い傾向にあることが分かりました。
近年は、学校の部活動やサークルで社会問題に取り組むケースも増えているようです。若い女性に人気のブランドが「対象商品の売り上げを全額寄付する」といったキャンペーンなど、友達と一緒にサークル活動の延長として取り組んだり、キャンペーンに参加したりすることで、社会貢献活動を行うハードルが低くなったのではないでしょうか。
10代後半女性の約7割が社会問題に「関心がある」
社会問題に関心がある人の割合は女性全体で64.0%。10代後半の関心度は68.2%と、女性全体の平均より高い結果となりました。
「関心がある」と答えた割合はほかの世代とそこまで差はなく、平均的ですが、「やや関心がある」と答えた割合が52.3%と高く、過半数を占めています。合算すると約7割の人が関心があるという結果になりました。
SDGs 若い世代ほど認知度・関心度高く「内容までよく知っている」と答えた割合は約2倍
「SDGs」について知っていると答えた10代後半女性は51.1%。女性全体の値が33.5%であることを踏まえると、突出して高い結果となっています。20~30代では30%弱、50代では16.9%と、年齢を増すごとに認知度は低くなる傾向にあります。
また「内容までよく知っている」と答えた割合は女性全体で11.8%ですが、10代後半女性では26.1%と、倍以上であることが分かります。
SDGsを知っている人のうち、「関心がある」と答えた人は10代後半で15.9%。「わからない」と回答した人の割合は、10代後半では0%。他の年代では4.5%~15.6%でした。10代後半は、認知度に比例するように関心がある人の割合も高い傾向にあります。特に、分からないと回答した人が一人もいないことは、学校教育にSDGsを積極的に取り入れるようになったことが背景にあると考えられます。
2010年代後半になると、高等学校ではSDGsと結びつけながら現代社会の授業を行うなどの工夫がされています。たとえば、授業内でプレゼンテーションを行う際は発表内容とSDGsの関わりについても述べるなど、一方的に情報・知識を与えるのではなく、社会課題に関する自らの考えを発信する機会が重視されています。こういった教育現場での取り組みにより、若い世代にとって社会課題が身近なものになり、主体的な活動へと繋がっていったのでしょう。
商品やサービス検討時、若い世代ほど社会課題を重視する
10代後半女性の11.4%が「企業が取り組む社会課題の内容を、商品・サービス検討時に重視する」と回答しています。これは今回調査したどの年代よりも高い割合で、年齢が低いほど企業の社会課題への取り組みを重視する傾向にあることが分かりました。
この結果からも、若い女性の社会課題への関心の強さが読み取れ、いわゆる“※エシカル消費”が広がりつつあることが推察できます。こういった流れを受けて「マイボトル持参で割引券を提供するカフェ」「動物実験をせずに商品開発を行うコスメブランド」など、社会課題に取り組む姿勢を打ち出す企業も増えているようです。
※エシカル消費 消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を行うこと。(消費者庁ホームページより)
社会課題への関心は就職検討時にも影響。10代後半の53.4%が企業の取り組みを重要視
10代後半の53.4%が「将来の就職先を、企業の社会問題への取り組み内容を重視して決める」と回答しました。
2030年までに、持続可能でより良い世界を目指すという動きが社会全体であるうえで、自身がこれから働くことになる企業にも、積極的な社会課題への取り組みを求める人が多いようです。
一方で「就職先を社会問題への取り組み内容を重視して決めるか」という問いに対して「わからない」と回答した人の割合は、10代後半で20.5%。他の年代と比べ5~10pt程度高い結果となりました。
「社会環境」と「自然環境」優先すべき課題とは
女性が企業に取り組みを求める社会課題は「安心・安全な商品・サービスの提供(28.0%)」「自殺や性差別、虐待、いじめ問題への対策(25.6%)」の順にあげられました。この2つの項目は、いずれの年代でも上位5項目の中に入っています。
10代後半の女性では「自殺や性差別、虐待、いじめ問題への対策」「働く人や関わる全ての人の人権尊重」「女性が活躍できる職場づくり」の順に、企業へ取り組みを望む人が多いという結果になりました。今後自身が働くことになる環境の改善を求める傾向が強く見られ、若い世代ほど「社会環境」についての関心が高いと言えるでしょう。
一方で「食品廃棄(フードロス)の削減」「環境配慮型塗料など、地球環境に優しい原料の使用」「廃棄物、廃プラスチックの削減、リサイクル推進」など「自然環境」にまつわる社会課題については、年代が上がるほど企業への取り組みを望む人が多く、関心が高くなるという傾向がわかりました。
「社会環境」と「自然環境」は、いずれも企業が取り組んでいくべき重要な社会課題ですが、主な顧客層がどの年代であるかによって、より重心を置いて取り組むべき社会課題は何なのかが見えてくるのではないでしょうか。
若い女性の社会課題への関心は高い。企業は状況に合わせて変化していくことが重要
調査を通して、若い女性の社会問題・社会課題に対する関心が高く、特に、今後自分たちが立つことになる社会環境の改善を望む声が大きいことがわかりました。
今後は、女性の社会課題への関心を意識したうえで、働きやすい環境を整えたり、社会課題への意識の高まりを商品・サービスに取り入れ、変化させていくことが求められるでしょう。
調査概要
調査方法 :インターネットリサーチ(ファストアスクモニター対象)
調査時期 :2020年8月12日~8月18日
詳細レポート
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