スマートフォン(以下スマホ)決済とは、スマホにインストールしたアプリを用いた支払いシステムのこと。非接触型の決済であることもあり、コロナ禍を経て導入する企業や消費者が増えています。
また、2022年には、マイナンバーカードの取得などによりもらえる「マイナポイント」や、PayPayと地方自治体と連携した「プレミアムポイント還元キャンペーン」など、スマホ決済を導入するきっかけとなる大きなキャンペーンが実施され、さらにスマホ決済のハードルを下げた可能性もあります。
こういった状況の中、女子高生におけるスマホ決済の利用状況に変化はあったのでしょうか。2021年のデータと合わせて、女子大学生との利用状況とも比較し、最新の動向を探ります。
2022年に若年層女性のスマホ決済利用が大幅に増えている
まず、女子高生が過去1年の間に利用した決済手段については、2021年の調査と同じく現金が91.7%と最も多くの人に利用された決済方法となりました。
2021年と2022年で調査の実施月が異なるため、季節的な要因が影響している可能性は否めないものの、前年と比較すると現金は91.0%→91.7%と0.7ポイント上昇する結果となりました。女子高生にとっては、まだまだ現金での決済が主流と言えそうです。
ただ、スマホ決済について比較すると、36.1%→52.1%と16ポイントも上昇し、約1.5倍に増えています。デビットカードやクレジットカード(親名義・家族カード、自分名義ともに)は、どれも減少傾向にあることから、スマホ決済に集約している可能性も否めません。
また、大学生の昨年比も、スマホ決済は高校生と同様に、49.7%→58.9%と9.2ポイント増えています。10~20代のスマホ決済の利用は、2022年に大きく上昇したといえそうです。
一方、高校生と大学生を比較してみると、主流の決済方法はどちらも現金であるものの、スマホ決済は大学生の方が6.8ポイント高くなりました。
特徴的なのは自分名義のクレジットカード決済です。2022年は高校生が0%に対して、大学生は43.2%とダントツで多くなっています。また、大学生のクレジットカード決済の利用比率も2021年と2022年で比較すると24.4%→43.2%と大きく上昇しています。
2022年4月より成年年齢が18歳に引き下げとなり、18歳になると親の同意なしで自分名義のクレジットカードを持てるようになりました。その影響もあってか、2022年は大学進学後に自分名義のクレジットカードを作成・使用する傾向が強まったようです。
また、スマホ決済の際の入金方法について調査したところ、高校生は58.7%、大学生は54.8%と半数以上が「ATMから現金でチャージ」を選び、現金でチャージが最も多く利用されている入金方法となりました。
「自分の銀行口座」と「自分のクレジットカード」は、大きな差をつけて大学生の方が多く、アルバイトなどで自身の自由になるお金が高校生よりも多い、また自身の名義のクレジットカードを持てる年齢であることが、要因と考えられます。
最もよく利用する場面は、高校生・大学生共に「コンビニエンスストア」
スマホ決済の利用場面については、高校生も大学生も、トップが「コンビニエンスストア(高校生94.7%、大学生95.0%)」となり、次いで「ドラッグストア(高校生58.0%、大学生65.3%)」という結果となりました。「スーパー・ディスカウントストア(高校生54.7%、大学生60.6%)」「飲食店(高校生49.3%、大学生61.4%)」と僅差で迫っており、身近な場所での利用が多いことがわかります。
一方で、現金とスマホ決済をどちらも利用すると回答した人に、「現金の利用を手間に感じた場面」について聞いたところ、スマホ決済を最も利用していた「コンビニエンスストア」が一番「手間に感じた」場所として選ばれました。
多くのコンビニエンスストアでスマホ決済の対応は可能ですが、チャージ不足や、映画チケット、切手など、一部利用できないものの支払いについては現金を使う必要があり、手間に感じたのかもしれません。コンビニエンスストアは、じっくり物を選ぶというよりも、スピーディーに目的の買い物をする場所でもあるため、スマホ決済に比べてスムーズさに欠ける現金利用を「手間」と感じやすい傾向もありそうです。
スマホ決済未利用者の約2人に1人が「今後1年の間」に利用を検討
過去1年の間にスマホ決済をしなかった人に対して、スマホ決済への興味について聞いてみると、高校生も大学生も「まだ使ったことがなく、興味がある」が最も高い割合を示しました。
使用経験の有無にかかわらず、両者とも「興味がある」と回答した人の方が多い傾向にあり、スマホ決済に対して一定数の関心を持っているようです。
さらに、スマホ決済に「興味がある」と回答した人に、利用したい時期についても調査したところ、「すぐ利用したい」「半年以内に利用したい」「1年以内に利用したい」を合わせると、高校生が51.7%、大学生が52.9%となりました。3~4割が未定なものの、約2人に1人の人は、少なくとも1年の間に利用しようと検討していることがわかります。
反面、興味があるのに利用していない理由については、「使いすぎる不安がある」が両者とも3割以上となり、最も高い傾向が見られました。両者間で最も差があったのは、「個人情報の流出に不安がある」で、大学生が26.5%に対し、高校生は14.9%となり、11.6ポイントの差をつける結果となりました。
成人し、社会的な責任が課せられたり、大学やアルバイトなどでの勉強や経験により知識を身に着けたりしたことで、大学生の方が個人情報の流出に対して身近で、危機感が高い傾向にあるのかもしれません。
スマホ決済の導入でさらなる顧客の拡大に期待
2021年の調査と比較すると、スマホ決済の利用割合は高校生・大学生ともに、2022年で格段に伸びていることがわかりました。そして、スマホ決済未利用者の利用希望時期についても、昨年は「すぐ利用したい」「半年以内に利用したい」「1年以内に利用したい」を合わせると高校生が38%で13.7ポイントもアップしています。大学生よりも高校生のスマホ決済導入の方が、今後さらに伸びる可能性があります。
今後、スマホ決済の利用者がますます増えていくことに合わせ、事業者側にも更なる活用シーンを想定した購買体験のデザインが求められそうです。
調査概要
調査対象者:15~24歳の女性728名
調査方法 :Webアンケート
調査時期 :2022年11月14日(月)~11月21日(月)