日本での成年年齢は、1876年の太宰官布告で20歳と定められて以降、明治から令和にかけての140年以上の間、変わりませんでした。ですが近年は、選挙権年齢を18歳に引き下げるなど、18歳以上は大人として正常な判断力が備わっているという認識が一般的になり、2018年6月、成年年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正案が可決されました。
成年を迎えると、契約時の親の同意が不要になるなど、義務と権利にさまざまな変化が生じます。これまでより若い年齢でそういった変化がおとずれることに対し、我々企業はどんな配慮をすべきでしょうか。当事者である15~18歳女子とその保護者に対して、民法改正への理解や行動意向についての調査を行いました。
当事者の約95%が成年年齢引き下げを認知している
2022年の成年年齢引き下げについて「知っている」と答えた人の割合は、当事者となる現15~18歳で75.1%。保護者で57.8%でした。「時期は知らないが成年年齢が18歳になることは知っている」と回答した人を含めると、当事者は94.9%、保護者は89.0%と、いずれも高い数値となります。
認知している人の割合は、保護者よりも当事者の方が大きく、自分たちが従来よりも早くして「大人」として扱われることに対し、強い関心があるようです。
賛成派と反対派で割れる意見
成年年齢引き下げに対し約4割が「賛成」 (15-18歳女子41.5%、保護者37.6%)と回答しました。
次いで「反対」(18歳よりも高い方が良い)が多く、15-18歳女子で32.0%、保護者で36.5%という結果になり、意見が分かれる結果となりました。
「反対(18歳よりも高い方が良い)」と回答し、今まで通り20歳が成年年齢に適していると考える人も当事者・保護者共に3割程度おり、18歳で成人を迎えることに対し「大人として責任が担えるのか」と不安を感じている人も少なくないようです。
民法改正内容の理解が進む一方、ローンは組めないという声も
「民法改正後、18歳でどんなことができるようになると思いますか」という質問に対し、「親の同意なしで結婚できる(15-18歳女子56.5%、保護者59.9%)」「親の同意なしで携帯電話を契約する(15-18歳女子54.5%、保護者52.1%))」「10年有効なパスポートを作る(15-18歳女子54.2%、保護者54.6%) 」という3つの項目については、子、保護者ともに半数以上が「18歳でできるようになる」と回答しました。
一方で、「親の同意なしでローンを組む」は「18歳ではできない」との回答が他項目と比べ多く、15-18歳女子42.7%、保護者31.9%となりました。
成年を迎えたとはいえ、飲酒・喫煙が認められるのは、今後も従来通り20歳になってからと定められます。これまで「20歳になったら可能」となっていた全ての事柄を、18歳を迎えた時点でできるようになるわけではないこともあってか、「親の同意なしでローンを組む」ことも、18歳ではまだできないと考える人が多いようです。成年年齢引き下げに対する理解度が高い一方で、具体的内容に関してはまだきちんと知られていないというのが現状です。
約4割が「親の同意なしにクレジットカードを作りたい」
「成年になったらしたいこと」として、「親の同意なしでクレジットカードを作る」が最も高く、39.1%。次いで「親の同意なしで携帯電話を契約する(26.1%)」、「10年有効なパスポートを作る(25.7%)」の順でした。
キャッシュレス化が進み、さまざまな決済方法が普及しつつある現代ですが、クレジット支払いのみに対応している店舗やネットショップも未だにあるため、クレジットカードを持っていないと欲しいものが購入できないというケースがあります。また、ネットショッピングの際の支払方法は、クレジットカード以外は手数料が発生してしまうことも少なくないようです。こういった買い物の際の利便性やお得度から「親の同意なしでクレジットカードを作りたい」を選ぶ人が最も多い結果になったのでしょう。
成年になった際の行動スタンス、ローンに対する不安
子が「成年になったら自分で判断する」と回答したのは、「10年有効なパスポートを作る(38.3%)」、「結婚する(34.4%)」、「携帯電話を契約する(30.4%)」の順です。
「ローンを組む」は、子の29.7%が”保護者が判断”すると回答しました。(「意志を伝えた上で保護者が判断」「保護者の意志で判断」の合計値)
保護者が「本人に判断させる」と回答したのは、「10年有効なパスポートを作る(40.4%)」 「携帯電話を契約する(30.1%)」 「クレジットカードを作る(20.9%)」の順です。
当事者同様に、「ローンを組む」に関しては、63.8%が保護者が判断すると回答。(「本人の意志を聞いて保護者が判断」「保護者の意志で判断」の合計値)
大きなお金が動くことになるローンは、ちゃんと払っていけるのかと不安を感じたり、積極的に組みたいとは思わない人も多いのでしょう。また、保護者も「ローンを組む」に関しては6割以上が自分たちが判断したいと、子よりもさらに慎重な様子が伺えます。
事業者、確認と配慮が必要
子が契約をする際に、相手の企業に対し求めることとして「契約前に、親に署名を求める(42.6%)」、「契約後、親の申し出があれば契約解除が返品を受け付ける(40.8%)」が多くあげられました。
成年年齢引き下げに対し賛成している保護者は「特に求めない」が16.7%で、反対している親に比べ10ポイント程度高い割合でした。
賛成している保護者が「特に求めない」と回答している割合が多いことから、各家庭ごとに捉え方に差があることが分かります。しかし、つい最近まで「子供」の枠内にいた子が、早い段階で大人として扱われることには不安が大きく、まだきちんと関与していたいと感じる保護者も多いようです。
混在する期待と不安
成年年齢引き下げに関して、自身の気持ちを聞いたところ、
・若い世代の意見が反映されていく
・色々なことができるようになり行動の幅が広がる
・20歳未満の飲酒・喫煙が増える可能性が高い
・自分の意志による契約の消費者トラブルが心配
・自己責任になり、あまり理解していないまま社旗に飛び込むのが不安
などの声が集まりました。
当事者は政治への参加や自分の意見が社会に反映されることに期待しつつも、一方で、責任を負うことについて、不安を感じている声が多く上がりました。また、犯罪に対する不安の声もありました。
・自分自身に責任を持ち、成年として自覚を持つことができるからいいと思う
・政治に関して意識を持ってほしい
・判断力がまだ幼い気がする
・18歳の未熟さを狙った犯罪に巻き込まれなあいか不安
など、保護者は社会的な自立に期待してはいるものの、一方で、未熟ゆえ犯罪やトラブルに巻き込まれないか不安という意見が多くありました。
親と子、どちらも納得する取引へ
従来より早い段階で「クレジットカードが作れる」「ローンが組める」など活動や選択ツールの幅が広がることに対し、子も保護者も” 自立”を期待してはいるものの、不安の声も多いということが分かりました。大半の保護者が、子の契約行為に際し親の関与を求めており、未熟さゆえのトラブルや犯罪に巻き込まれることを危惧しています。それゆえに子供の独断で進めてしまわず、保護者がきちんと理解していたいと考える傾向が強いようです。
対象の年齢を顧客とする企業は、トラブルなく安全に取引を進めるために当事者はもちろんのこと、保護者への説明も怠らずに、不安を少しでも軽くするような配慮が必要となってくるでしょう。
調査概要
調査対象者:15~18歳女子(20歳以前に「成人」となる人)・保護者(20歳以前に「成人」となる女子と同居する30~60歳までの男女)
調査方法 :インターネットリサーチ
調査時期 :2020年9月7日(月)~17日(木)
詳細レポート
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