「Clubhouse」は「世界中の人が気軽に話し合える場所を提供する」をコンセプトとしてリリースされた、招待制の音声配信SNSサービスです。気軽に世界中の人の話を聞くことができるラジオ感覚のアプリケーションで、「聞く・話すSNS」として話題になり、芸能人や著名人が一斉に始めたことによって注目されました。また、招待制ということもあって、招待枠が売買されたことなども話題となりました。
2021年4月現在、世間のClubhouseへの熱は落ち着きを見せています。しかし、今後またブームが再来した場合、「Twitter」や「Instagram」あるいは「TikTok」などと同様に、10代・20代の若年女性の生活に根ざしたアプリとなる可能性は十分にあります。
Clubhouseに対して若年女性が現時点で抱いている印象や、その他のアプリと比較した認知度・利用状況を知るべく調査を行いました。
認知度は全体の71%。流行に敏感な学生からの認知度が高い
一時期はテレビの情報番組などでも連日取り上げられ、一気に名の知れたアプリとなったClubhouseですが、若年女性にはどの程度認知されているのでしょうか。
今回の調査では、若年女性がClubhouseを認知している割合は全体の71.0%。そのうち大学生が最も高く74.8%、次いで高校生71.1%、社会人65.7%、中学生63.6%でした。
過去にテレビCMが放送されたこともある健康管理アプリ「ルナルナ」の認知度(69.8%)を上回る結果となり、その話題性が見て取れます。
芸能人の「ここだけの話」を聞けることなどがネット上でも話題となり、トレンドに敏感な学生の認知度が高い結果になったと考えられます。
使用している割合は約1割。認知度と利用率に大きな差
現在利用しているアプリについて伺ったところ、Clubhouseを利用している人の割合は全体の10.9%。大学生は13.8%、高校生は9.5%、社会人は10.3%という結果となり、認知度と同様に大学生の利用率がやや高い傾向がありました。
利用規約上は18歳以上が対象のサービスとなり、高校生以下は対象外となることもあってか、高校生の利用率は社会人と比較しても低い結果となったようです。
Instagramは「認知度98.6%、利用率は95.1%」、YouTubeは「認知度97.3%、利用率93.6%」など、有名なSNSは認知度と利用率の差が大きくないのに対し、Clubhouseの場合、認知度の71.0%に比べて利用率が10.9%と著しく差が大きい事が分かります。他のアプリとの大きな相違点としては、招待制であることが影響している可能性は高いでしょう。
また、アプリが未だ日本語に対応していないことや、iOS版のみしか提供されていないことも、アプリの存在を知ってはいるものの、利用するに至らない人が多いことの一因になっていると考えられます。
利用経験者の離脱率は3割超え。既に冷めている人が多数?
現在Clubhouseを使用している人の継続意向割合は「継続意向あり」が28.2%、「どちらともいえない」が27.1%、「継続意向なし」が10.6%でした。
使用している人の中では継続意向アリが最も高いという結果となりましたが、実はすでに離脱済みの人が34.1%と一番多くなっています。世間のブームが去るとともに興味を失う人が多いことは否めないようです。
利用意向がない人の割合は43.6%。「利用意向あり」を「なし」が上回る
Clubhouseを知っているものの、まだ使用したことがない人が、今後利用したいと思っているかどうかを示す利用意向割合は、「利用意向あり」が34.4%、 「どちらでもない」が22.0%、「利用意向なし」が43.6%でした。
4割以上が「利用意向なし」と回答し、今後利用したい人よりも利用するつもりがない人が上回る結果となりました。
ネックは英語表記。録音・口外禁止などルールの多さゆえの離脱も
利用意向がある方・ない方双方に、具体的な理由について回答いただきました。
・自分自身あまり使わないけど、有名人とかが使っているのを聞きたいから(専門学校生)
・芸能人の話を生で聞けるから(高校生・高専生)
利用意向無し
・流行りにのったが、使い方が難しかったから(高校生・高専生)
・英語ばかりで使い方がわからない(専業主婦)
利用意向ありの理由としては、好きな有名人が利用していることが多く挙げられました。使い始めるきっかけや利用を継続するかどうかの決断には、好きな有名人が利用するか否かが大きく影響してきそうです。
一方で、利用意向なしの理由としては「使い方がわからない」という理由が目立ちました。現状は英語表記しかなく、使い方を理解することが難しそうという点が、利用への一つのハードルとなっているのは間違いなさそうです。
Clubhouseは、話題となった「招待制度」のほか、録音禁止・口外禁止などの細かいルールが多くあります。「ここでしか聞けない話がある」という特別感がある一方で、特に若年層は、招待制で思い立ったときに始めにくく、多くのルールに煩わしさのほうを強く感じている人が多いのかもしれません。
海外での利用傾向から見る、ブーム再来の可能性
日本でのブームは去ってしまったとも言われるClubhouseですが、海外での人気は衰えておらず、現在でも多くの起業家や、歌手のビヨンセなどの有名人も多く利用しています。利用傾向としてはベンチャー起業家の討論や演説など、企業色が強い傾向にあるようです。
日本でも今後、著名な政治家や企業が参入していくことがあれば、利用傾向が変化していくかもしれません。
また現在は、利用者が収益化を行うシステムはありませんが、投げ銭システムの導入や、ルームに入るための有料チケットの販売などが可能となれば、YouTubeやオンラインサロンに変わる収益化の場となる可能性もありそうです。
2021年に大きな話題となった「Clubhouse」。今回の調査では、若年女性の認知度は高いものの、利用に至った人は少ないという結果になりました。
2021年4月の時点では「ブームは一時的なものだった」との評価が一般的になりつつあるようですが、一時の熱狂は、新型コロナウイルスの影響でコミュニケーション不足を感じる人が多い中で、「音声配信SNS」の需要があることの証明と言えるのではないでしょうか。FacebookやTwitterがClubhouseに類似した機能を相次いでリリースしたことも、その現れかもしれません。
今後、対応言語の多様化や収益化などのアップデートが行われ、有名人や企業の参画が増えれば、ブームが再来することもあり得るでしょう。
調査概要
調査対象者:ガールズ総合研究所リサーチモニター
調査方法:インターネットリサーチ
調査時期:2021年2月26日(金)~2月28日(日)