「UQmobile」や「Y!mobile」など、近年、テレビCM等でもよく耳にするようになった「格安スマホ」。
女子高生の利用者の割合は26.3%となり、docomo(29.7%)、au(23.9%)の大手キャリアに並ぶ存在となっています。
格安スマホは、「携帯電話会社がメールアドレスを発行しない」、「音声通話なしプラン、SMSなしの契約も可能」、「キャリア決済(携帯電話利用料金とまとめて支払いができるサービス)が利用できない」など、大手キャリアとは利用環境が異なる部分があります。
そういった、大手キャリアとは異なる利用環境が、サービス利用の障壁になっていることはないのでしょうか。
大手キャリアのスマートフォンを利用している女子高生と、格安スマホを利用してる女子高生とで、会員登録や課金機能の利用状況に差があるのかを知るための調査を行いました。
メアド保有率84.9%、キャリアスマホ利用者と同程度
アプリであれ、Webサービスであれ、スマートフォンでのサービス利用にはメールアドレスや電話番号などでの「会員登録が必須」であることが多いものです。しかし、格安スマホ事業者はメールアドレスを発行しないことが多く、過去に利用していた大手キャリアのメールのアドレスを引き継ぐこともできません。
ですが、メールアドレスを保有している人の割合は、キャリアスマホ利用者で88.3%、格安スマホ利用者で84.9%と大きく変わらないという結果になりました。 格安スマホ利用者は、フリーメールサービス(iCloudメールやGmailなど)を活用しており、キャリアスマホと比較して、大きく利便性が損なわれてはいないようです。
格安スマホ保有者のうち、使用している人は52.3%、保有していても使用していない人が32.6%でした。「LINE」などの無料でメッセージのやり取りができるアプリを利用する機会が多いため、メールアドレスを保有していても、普段は利用しない人が多いと推測されます。
利用している人が約5割となると低い値のように感じられますが、大手キャリアのスマホ利用者でもメールアドレスの利用者は61.2%と大きな差はなく、格安スマホ利用者も、必要なタイミングではメールアドレスを利用していることがわかります。
スマホ保有者の2~3割は電話番号を利用していない
電話番号の保有状況は、キャリアスマホを利用している女子高生で94.4%、格安スマホ利用の女子高生では90.7%となりました。
また、利用状況はキャリアスマホを利用している女子高生で78.0%、格安スマホ利用の女子高生では72.1%となり、9割以上が電話番号を保持しているものの、2~3割程度は電話番号を利用していない、という結果になりました。
キャリアスマホ利用者と格安スマホ利用者の間には、電話番号の保有・利用状況に大きな差はなく、格安スマホ利用者にとっても、電話番号を利用した会員登録や契約はサービス利用の障壁になりにくいと言えそうです。
「通話をする」という目的のみで考えれば、現在は無料通話が可能なアプリ「LINE」を利用している人が多いため、電話番号を利用していない人が2~3割程度いる、という結果になったと考えられます。
格安スマホユーザーから最も支持されている会員登録方法は「アプリ連携」
スマートフォンを所有している子を持つ保護者に、子供のスマートフォン利用に対する対応を聞いたところ、「メールアドレスを入力する会員登録」を許容している割合はキャリアスマホ利用の女子高生で77.1%、格安スマホ利用の女子高生で68.6%でした。
また、「電話番号を入力する会員登録」を許容している割合は、キャリアスマホ利用の女子高生で73.4%、格安スマホ利用の女子高生で62.7%。
「アプリ連携での会員登録」を許容している割合は、キャリアスマホ利用の女子高生で82.2%、格安スマホ利用の女子高生で72.1%でした。
サービス利用における会員登録時の「メアドの入力」「電話番号の入力」「アプリ連携」については、いずれの方法においても格安スマホ利用者は、キャリアスマホ利用者よりも10pt程度高い割合で、制限を設けられています。
3つの会員登録手段の中では、「アプリ連携」が保護者から制限を設けられず、自身で会員登録ができる割合が最も大きいという結果になりました。現代の女子高生は様々なSNSアプリのアカウントを所有しています。電話番号やメールアドレスなどの個人情報を入力しなくても登録可能なアプリ連携は、キャリアスマホ利用か格安スマホ利用かに関わらず、選ばれやすい選択肢のようです。
有料サービスの利用許容状況に大きな差はない、しかしアプリ内課金は格安スマホユーザーが利用縮小
子供のスマートフォン利用に際し、アプリ購入や月額サービスへの入会等の有料サービス類をどこまで許容しているか尋ねました。
アプリ内課金(スタンプやゲーム内コインなどの購入)は、大手キャリアスマホ利用者の許容率は32.2%でした。格安スマホ利用者の許容率は22.1%で、キャリアスマホ利用者より10pt程度低いという結果となりました。固定費を安く抑えられる「格安スマホ」の選択をした家庭では、アプリ内課金に対してもシビアなルールを徹底しているのかもしれません。
通信容量の追加購入やサブスクリプションサービスなど、そのほかの有料サービスでは、格安スマホ利用者とキャリアスマホ利用者ともに2割程度と大きな差はなく、有料サービスの利用に対するルールに大きな違いは見受けられませんでした。
今後ますます格安スマホの利用が一般的となった場合、アプリ内課金については利用が縮小することも考えられます。アプリ内課金に頼りすぎないサービス提供が、長期的な売上げの維持につながることもありそうです。
有料サービスの支払い手段、格安スマホとキャリアスマホの違いは「キャリア決済」の有無
アプリ内課金の決済手段について、キャリアスマホ利用者は「キャリア決済(携帯電話利用料金とまとめて支払いができるサービス)(25名)」が最も高く、次いで、「親名義のクレジットカード(19名)」、「プリぺイドカード(13名)」となりました。格安スマホ利用者は「親名義のクレジットカード(9名)」が最も高く、次いで「プリぺイドカード(5名)」の順でした。
ほとんどの格安スマホ事業者は「キャリア決済」を提供していないこともあり、キャリアスマホ利用者で最も多い「キャリア決済」は、格安スマホ利用者には利用されていません。
キャリア決済に変わる、クレジットカードやプリペイドカードなどの決済手段を用意することで、格安スマホ利用者でも不便なく、有料サービスを利用することができると言えそうです。
格安スマホでも十分に、コンテンツを楽しむ環境を維持できる
格安スマホ利用者が会員登録の必要なサービスを利用する際、メールアドレスや電話番号など何らかの手段を用いることで、約8割の人が会員登録できる環境にある事が分かりました。
キャリアメールが付与されないなどの利用環境の違いが、会員登録のしやすさに影響を及ぼすことが危惧されましたが、キャリアスマホ利用者よりも会員登録ができる人の割合が若干低い傾向にあるものの、現時点では大きな影響はなさそうです。
とは言え、2020年12月に発表され注目を集めているNTTドコモの新料金プランはキャリアメールを付与しないものであるなど、今後格安スマホのみならずキャリアスマホでも、キャリアメールを付与しないプランが普及していくことも考えられます。電話番号・アプリ連携など様々な登録手段を用意しておくことで、登録への障壁はさらに低くなるのではないでしょうか。
また、有料サービスの利用に関しては格安スマホ利用者はキャリア決済を利用しにくいという違いはあるものの、クレジットカードやプリペイドカードなどの決済手段を用意することで、有料サービスの利用を促すことができるはずです。
スマートフォン向けのアプリやWebサービスを提供する企業は、今後、格安スマホユーザーが拡大することを視野に入れ、会員登録手段や、商品・サービス購入時の決済手段を、幅広く整えておくことが必要となってくるでしょう。
調査概要
調査方法:株式会社リサーチパネル会員へのインターネットアンケート
調査対象者:女子小中高校生を持つ30歳~59歳の母親
調査日:2020/5/11~2020/5/14